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パネルディスカッション「データ・テクノロジー戦略と国内活用事例」

「データ・テクノロジー戦略と国内活用事例」パネルディスカッションでは、以下の方々にご登壇いただきました。

・シバタ アキラ氏:DataRobot Japan チーフデータサイエンティスト 物理学博士
・進藤 竜也氏:株式会社セプテーニ・ホールディングス 人的資産研究所 所長
・中村 駿介氏:株式会社リクルート 人事統括室 人事戦略部 部長
・竹迫 良範氏:株式会社リクルートテクノロジーズ 執行役員(モデレーター)

パネラーとモデレーター

パネラーおよびモデレーターの自己紹介と現在の取り組み

竹迫良範氏(以下「竹迫氏」)
本パネルディスカッションでは、日本国内のHRテクノロジーで困ったことや泥臭いことなど、各社それぞれの生々しい事例をご紹介できればと思います。まずはそれぞれ自己紹介をお願いいたします。

シバタ アキラ氏(以下「シバタ氏」)
アメリカのボストンにあるAI企業、DataRobotでチーフデータサイエンティストとして日本の技術責任者をやっています。DataRobotという機械学習を自動化するツールを、日本で事業化していくのが主な目標です。技術とビジネスをつなげるのが自分のモットーです。現在必要とされているのは、その両方に対して深く理解していることによって、新しい価値を生み出すことだと思っています。

進藤 竜也氏(以下「進藤氏」)
新卒でセプテーニ・ホールディングスに入社して以来、29歳の今までずっと人事をやっており、現在は人的資産研究所という組織の所長を務めています。人的資産研究所は人事部から独立した4人くらいの体制の組織で、グループ全体の人事に対しデータやテクノロジーを使って人材の採用と育成を科学することを目指しています。

弊社はインターネットマーケティングを主な事業とし、社員数は約1500人。平均年齢が29歳と若いため、若手人材をいかに早く戦力に育てるかが非常に重要です。そのため、経営の観点から科学していこうと我々の組織ができました。長年、人事としてデータやテクノロジーを活用してきたので、今日は実際にやってみた結果などをお話できればと思います。

中村 駿介氏(以下「中村氏」)
2006年に新卒でリクルートに入社して以来、13年ほど主に人事の仕事に携わっています。入社後5〜6年は人事制度改定など、実地を通じて組織の変革をやっていました。その途中でIT系人材の活用や組織開発に触れる機会があり、どうせなら自分でゼロから組織を作りたいと会社に提案し、組織立ち上げのプロジェクトリーダーとして参画。約3年間の取り組みで、最大500人ほどの組織に成長させました。その中で、リクルート初の内製開発エンジニア組織を作りたいと動き、上手く実現できたタイミングの2015年に、現職である本社人事に戻りました。

その後、また何か新しい取り組みをやりたいと思いついたのが、HR領域にエンジニア組織を作ることでした。3年半の活動を経て、ビジョンに共感して集まってくれたメンバーが約20人。うち半数はデータサイエンティストやエンジニアです。

プロジェクト一覧

現在動いているプロジェクトをいくつかご紹介しましょう。まず採用時点でのパフォーマンスや定着率の予測に取り組んでいます。コアとなるのが「最適配置」、つまり誰がどの領域で最も適性が高いのか、どのマネージャーと相性が良いのか、そのマネージャーの組織に配置するとしたら、育成担当は誰が最も適しているか。この3つの予測結果を合わせて、採用時点でパフォーマンスがどうなるかを判断しています。

つまり、誰をどの場所に配置すれば一番活躍するか?というところを、採用時点で予測することに取り組んでおります。

その最適配置を出すロジックは、当然そのまま育成にも活用できるため、育成支援という形で実際に配属される際は、その組織のマネージャーに育成指南書のような形で申し送りし、スムーズなオンボーディングにつなげています。

下段に移ると、まずパフォーマンス評価。企業によっては、結局誰がイケているのか分からないとか、どういったデータソースから誰が優秀だと決定づければいいのかなど、まだ分からないことも多いと思います。これらについても、例えば売上データから過去のものから確認し、優秀な人はどのような成績の推移をするのかといったような研究も始めております。

下段の真ん中の組織開発で言いますと、サムサーさんの講演でもたびたび出てきました「エンゲージメント」の可視化に取り組んでいます。弊社では約2年前から試験的に始め、まさに今、サーベイの回答期間になっているところです。独自の約25問のサーベイを作り、それを国内グループ会社の従業員約2万人に調査をしております。基本的には全て自動化されたシステムを社内で開発し運用をしています。

仮に約2万人のサーベイを手作業で集計するとなると大変ですが、集計や簡単なレポーティングであれば、その場でWebからできるBIツールを各人事の方々に配布しています。

最後にデータ基盤。全てのデータをしっかり管理しようということで、社内のさまざまなデータをリアルタイムで同期させていく仮想データベースのプロジェクトを1年半前くらいから始めています。現在は、社内にある営業データや過去40年分の考課データ、従業員のミッションシートなども全て同じデータベースの中に格納している状態です。

大切なデータですので、当然セキュリティ対策ももちろんですが、我々のエンジニアが偉いと思うのは、エンジニアが扱えるだけではなく、「人事の方々が、簡単にデータを扱える状態を作る」ことを掲げ、いかに利用のハードルを下げられるのかに配慮して技術開発に勤しんでくれていることです。

竹迫氏
この流れでシバタさんにお聞きしますが、さきほどのHRテクノロジー領域では、DataRobotの活用事例はあるのでしょうか?

シバタ氏
今お話いただいた中にもDataRobotの事例は入っていたのですが、結構使われているようです。ですが、特に採用などで使っていると、どの企業さんもお話くださらないですね。なかなかセンシティブイシューと捉えているようで、やっている・やっていないとも言わないケースが多いみたいです。

私のお客様でもやはり、特に採用でしたら、どういう候補者が次のステップに進むのか。要するに、進みそうな人を優先的に進めてあげましょうとか。あと、例えばオファーしても辞退しそうな人は誰なのかとかですね。オファーをしたのに辞退されたらコストが大きいので、そういう人たちに対して優先的にフォローしていかないといけないよね、といった話があります。

他には退職ですね。これはプレスリリースが出たので言えることですが、コールセンターで3ヶ月後に辞めてしまうオペレーターを予測してほしいというお客様がいらっしゃいました。コールセンターは3ヶ月くらいすると半分くらい人が辞める職場らしく、でもDataRobotを導入することで辞める人が半分になった事例もありました。

人事採用の分野は、データで最適化されている世界ではまだないので、やってみると大きい結果が出たという話は、私のお客様からもよく聞いております。

竹迫氏
最後に私からも簡単に自己紹介させていただきます。私は現在10社ほど兼業しており、リクルートグループではリクルートテクノロジーズの執行役員として、エンジニアマネージャーの育成を主に担当しています。

以前から経済産業省の元で、イノベーション人材の育成に携わっていました。その成果として、起業する人――エンジニアが起業する、特に最近HRテクノロジーで起業する人もたくさん増えてきていますが、それ以外の方がせっかく国の予算で育成しても、GAFAをはじめとする外資系企業に就職したり、日本の大企業に就職するも馴染めず、すぐに辞めてしまいGAFAに転職したりする事例が増えていることに問題意識を持っていました。

今はスペシャリスト人材育成のために学校の先生も兼務しながら、ビジネスの領域で本当に何が必要なのか?ということを、教育の現場にフィードバックし、それを実際に社内の育成にも応用しています。さらにITエンジニアという新しい職種でもありますので、彼らが定着するためにはどうすればいいかをいろいろと掘り起こしてもいます。

さて、ここでみなさんにクイズです。これは日本のお城とヨーロッパのお城の写真なのですが、違いは分かりますか? 進藤さん、いかがでしょう?

進藤氏
えー、石がいろんな形かどうか。

竹迫氏
ありがとうございます、正解です。実は私、石垣マニアでして、日本の石垣の石は形が一つ一つ違うんですね。ヨーロッパのお城はレンガで規格を作り、そこから土を固めて壁を作っていきます。日本のメンバーシップ採用と、欧米のいわゆるジョブディスクリプション型の採用、その違いかなと思っています。

日本ですとやはり新卒で一括採用し、その人に合わせた仕事をOJTで育てる。適材適所でパズルのピースを当てはめ、悩みながら配置を考え、実際に事業の基盤を作っていく形です。一方欧米型のものは、成果が出ないと、部品の交換のように人が替わります。レンガの規格に合わない場合は、パフォーマンス改善のプログラムを適用されるなど厳しい措置があります。

実際に組織の中ではいろいろな事業フェーズがあり、0から1で新しいものを生む仕事や、1→10に事業を成長させていくもの、または10→100。さらにそれ以降では、専門領域の分担をして磨き込んでいくところがあると思うのですが、実際大企業になってくると、100のフェーズの仕事が多くなります。

その中で、専門人材が欲しいということで、100の組織の中で専門人材を採用し、仕事を任せるのですが、「自分の役割はココからココまでだ」と決めている人だと、業務の行間や隙間を埋めきることができない。つまり日本の石垣のように、お互いが補い合いながら業務を進めないと回らない形になっているので、ミスマッチが起きやすいのではないか?と分析の結果、一つの仮説を置いています。

そのため、リクルートの社内では社員による新規事業提案制度を持っています。まさにサイロ状態で、巨大な組織を動かすのは大変だけれども、新規事業を提案し、そこで自分1人であらゆることをやってみる。エンジニア領域ではフルスタックエンジニアと言われていますが、企画から実際にプログラム開発、リリース、運用までを1人でやっていく。

そのことによって、「なるほど、こういう全体の業務プロセスがあるのか」と理解でき、新規事業が終わった後に、また戻って大活躍していくケースがあります。サイロ状態を壊していくためには、こうした循環を意図的にやっていかなければならないと思っております。

さらに、「圧倒的な当事者意識」がリクルートの企業文化の中で言われていまして、開発の現場では、まずはiOSのアプリを作らないといけないから、iOSエンジニアが2人いります。Androidアプリのエンジニアも3人必要で、サーバーサイドのエンジニアも3人といった感じで、要員計画からアサインされて仕事をしていきます。日本の場合は綺麗にジョブディスクリプションが整理されていないので、特に事業拡大のフェーズでは事業の成長と組織の成長にギャップがあり、それを埋める人が間にいないと成り立たなくなります。

業務の隙間に染み出した人、いわゆる自分の担当以外の職務もカバーできた人が、優秀な社員だかと周りから思われることが多いため、それはどんな人なのか?ということを詳細化していく。例えば、エンジニアの場合、技術以外にも事業ドメインの知識を理解していく必要がある。そういう人の行動特性を星取り表にしていき、ジョブディスクリプションを言語化することによって初めて、石垣のような職務の要件で誰がどんなピースになって、活躍できる・活躍できないかが分かるのではないかと思っています。

恐らくHRテクノロジーやAIの活用になってきますと、今まで言語化されていない、阿吽の呼吸でやっていた仕事の内容がどんどん定性化、定量化されていき、それで本当に足りないものは何なのか?と深掘りできるのかなと思っています。

データ分析で判明した驚愕の事実

竹迫氏
続いてセプテーニの進藤さんから、自己紹介スライドの後半について伺いたいと思います。

進藤氏
ここでは長らくデータ分析して分かった面白かったことをまとめています。

詳細は割愛しますが、まず「スタートダッシュに成功すると肉離れしやすい」について。社内の新入社員の活躍度合いは人それぞれですが、スタート時に極めて順調だった人は、意外にその後の活躍パターンにいろいろと差がでてくることがわかりました。すぐそのままの勢いで社外に出てしまうとか、逆に勢いが緩やかになるとか。

他には「元気のない営業でも売れる」。営業には元気さが必要だと一見考えられがちですが、実際に活躍している人のタイプを見てみると、全くそんなことはなく、営業1つにしても、いろいろなワークスタイルがあり、それに適したことをやっていれば成果は上がることを可視化しました。

竹迫氏
また、この「人の成長の30%は運」について解説していただけますか?

進藤氏
「P・E・G」とありますが、要は「どんな人(P=Personality)がどういった環境(E=Environment)で、どういう成長(G=Growth)を遂げたか?」ということを表したもので、これを全部データで蓄積しています。長いものだと20年分くらいあります。当社では、環境と本人の個性との相性が高いほど、大きな成長につながる可能性が高くなると考えており、特に新卒では本人のデータだけではなく、配属先に関するデータもその後の評価に影響を与えたことが分かりました。要は何も考慮せずに配属すると、どの組み合わせになるか=成長度合いは結構運の要素もあるということです。そのため、そのままではフェアではないですから、そこを最適化してあげたりとか、相性を良くしてあげたりとか、なるべくみんながパフォーマンスを上げられる配属・配置を心がけています。

竹迫氏
ありがとうございます。中村さんにもお聞きしますが、リクルートでは、配置は運の要素が強いのか、もしくはロジカルにやっているものですか?

中村氏
一昨年から、我々が作っている予測エンジンが導いた「この新入社員はこの場所、この部署、このマネージャーの元でこの育成担当を付けたらいいですよ」という提案を活用した配置を一部のグループ会社で始めました。

実はまだ、彼らがどのくらいのパフォーマンスになったのか?という結果はデータが出ていないので、何とも言えないのが正直なところです。ただし、実際にそれを導入した部署では、例年配属されてくる新入社員よりも総じて優秀だという感覚があるという話を聞いたり、配属された本人たちの声では、「上司が自分のツボを押さえてくれている気がする」といった声が続々と寄せられていたりしています。

できる限り早期に、そのパフォーマンスが測定できるよう開発中ではありますが、やはり人の良し悪しというより、向き不向きを捉えて、それに合う人と職場のマッチングをやっていくのは効果があると思っています。

阿吽の呼吸でやってきたことに、説明責任が求められるように

竹迫氏
ありがとうございます。シバタさんにさらに突っ込んだ話をお聞きします。最近AIが人の人生を左右してもいいのか?という、結構社会的な問題が提起されています。例えば先月ニュースになったのは、女性は過去のデータから見ると昇進しにくいことがあるため、採用時点で振り落されてしまう。それは良くないから止めましょうということですが、実際AIが人生を左右することはあるのでしょうか?

シバタ氏
人を差別するAIと、人を差別する人だったら、人を差別するAIのほうが、よほど直しやすいです。それは割と明確だと思います。差別している結果が分かればということですが。

その意味で言うと、機械だから危ないとか、人だからどうかということはないですが、ただやはり機械は割と盲目に学ぶところがあります。かつ、学ぶ能力が非常に高いので、今おっしゃっていただいた例もそうですし、人のあまり好ましくないような特徴も、データを元に学んでしまうことはあります。そういったことが、もっとこれから気をつけないといけなくなると思います。

竹迫氏
AIなどを導入する際、なぜその結果が出たのか因果関係などを説明する必要があると思いますが、DataRobotではどんな工夫をされていますか?

シバタ氏
営業トークみたいになってしまいそうですが(笑)、DataRobotでも説明責任は求められます。特に金融業界では機械学習の利用が進んでいます。銀行は顧客から預かった金を運用するため、投資判断などの際にロジックの説明を要求されるケースは非常に多いです。

DataRobotは機械学習を現場に導入することを重視してきました。モデルを作ることではなく、実際に使われて効果が出ることに注力してやってきたので、モデルに対する説明はよくできていると思います。

一方で、だんだん分かってきたことは、説明責任と結果責任は違うということ。結果責任は要するに大きな利益を生み出すかどうかですが、説明のしやすさは、ある程度は逆相関すると言われているかなと。

ですので、いずれの能力――高い精度のモデルを作る能力も説明する能力も上がっていますが、説明はつかないがリスクをとって使いましょうというところに、もっと大きな価値が生まれるかもしれない構造は、引き続きあるのではないかと思います。

竹迫氏
これまで人事やマネージャーが阿吽の呼吸でやっていたものは、アンコンシャスバイアスがかかっていることも多々ありました。それを直すのは難しいですが、その因子を説明できるようになれば改善しやすくなりますよね。

シバタ氏
そうですね。機械学習によって、自分がやってきたことにバイアスがかかっていることに気づけるかもしれません。進藤さんに伺いたいのですが、人的資産研究所での取り組みを通じて見えてきたビジョンなどあれば教えてください。

竹迫氏
では進藤さん、最後に「石の上にも3年はあやしい」についても少し触れてください。

進藤氏
2009〜2013年の新卒社員について、配属して最初に行った360度評価で思うような評価をあげられなかった人が、3年目にどうなっているかを過去のデータで確認してみました。

すると、パフォーマンスに悩んでいたケースが多く、大きく成長してアベレージ以上のスコアになったのは一部のケースのみでした。ただ、このデータの中身が興味深く、特定のメゲないパーソナリティの持ち主だったケースと、残りは3年の間に大きな人事異動があったケースの2つに大別されました。

たまたまかもしれませんが、後から見たらそうだった形なので、そうであれば、最初に上手くいかなかった人は、特殊な例を除いて環境を変えてあげるのが重要ではないかという気づきを得ました。新入社員が最初に上手くいっていなかったら、すぐ環境を変える取り組みに昇華した事例です。

ただ、弊社はインターネット領域の事業会社なので、比較的変化が速いというのもあり、あくまで弊社の事例としてご理解ください。

HRテクノロジーの真髄は仕組みではなく、仕組みによるプロセスの変化にある

竹迫氏
最後に中村さんから、資料の後半部分にあるSlackを利用した事例をご紹介いただけますか?

中村氏
我々のチームから出てきたヒットプロダクトです。すごくシンプルなものですが、HRテクノロジーがインパクトを生み出すまでの本質が含まれているのでご紹介したいと思います。

社内で「シンクロサーベイ」と名付けているもので、2018年4月に導入を始めました。具体事例でご紹介すると、約130人の新組織を立ち上げるプロジェクトがありました。しかもマネージャーが4人しかおらず、かつ1人のマネージャーが他の拠点も兼務しており、日常的に他のマネージャーと過ごすことがない。

普通に考えると、組織の状態が悪くなってしまう状況が予想されるので、我々のプロダクトを入れて実証実験的に取り組みをスタートしました。内容自体は簡単で、週に1回「しんくろ太郎くん」と名付けたbotが、Slack上で新人約130人に対して3〜4つの質問を送り、彼らがこれに回答します。そうすると、マネージャー4人と人事2人が見ているSlackのチャンネルに、リアルタイムで回答が届きます。

そのチャンネルを6人で見ながら、気になるコメントを書いている人や、スコアがあまり良くない人に特定のスタンプを押します。対応が必要な人だけの投稿が抽出された別のチャンネルに自動的に連携され、そこに挙がった投稿が自分のメンバーのものであれば、すぐに電話をしてどんな状況なのか確認します。

さらに誰がどんな対応をし、どんなリアクションだったのかは、BIツールで可視化できるようにしています。問題が起きた際、リアルタイムにできる限り早く対応したこと、過去に対応した人がその後どうなっているのか、週1回関係者全員でモニタリングすることを半年続けたところ、約130人の中で退職者はゼロに限りなく近かったのです。

また、社内で測っているエンゲージメント係数(eNPS)では、システムを導入した組織のeNPSは、導入していない組織と比べて12ポイント高かったのです。仕組み自体はアンケートフォームとSlackへの自動連携、その自動連携された情報をBIツールで見られるようにした程度の簡単なものです。そんな簡単なものでも、非常に大きなインパクトが出せるかもしれないというのは重要なポイントだと思います。

実際には、UI/UXも大事です。結局いつも使っているツール上でやらないと、使わなくなります。あとは「カッコつけない」というのも結構大事で、「しんくろ太郎くん」とわざとダサいんですよ(笑)。ダサくすると意外と回答率が上がるとかですね、そういったことも実は分かってきました。

大切なことは、この仕組み自体が先ほどの圧倒的な成果を出したのではなくて、この仕組みがあることで実際にマネジメントのプロセスに変化が起こり、それが劇的な成果を生み出しているところに、実はHRテクノロジーの真髄があるのではないかなと思っています。

中で扱われているデータそのものが、もちろん高いバリューを持っている場合もありますが、データそのものより、そのデータが何の苦労もなく毎週、過去のものも含め全て分かりやすい形で提示され、このBIに集まっている。ここから次のアクションを作り出すことが、HRテクノロジーのインパクトにも結びつく。その接合点だと思ったので、少しご紹介したいと思った事例でした。

竹迫氏
ありがとうございました。では残り時間は、パネラーの方に質問したい方がいらっしゃいましたら、挙手をお願いできますでしょうか。

――じゃあ、シバタさん、もうちょっと質問で掘り起こしたいものがありましたら、ちょっと何か――

シバタ氏
テクノロジーとは話は変わりますが、進藤さんがこうした取り組みをやられていく中で、自分たちの仕事の先のビジョンや、こんなことを自分はやりたいと思って仕事しているなど見えてきたことがあれば、ぜひ聞きたいなと思います。

進藤氏
データ自体の取り組みも非常にインパクトがありますが、それによって業務プロセスがガラッと変わり、大きな成果を出せたと感じています。例えば「データで人材を見極められるようになった」こと自体もインパクトはありますが、それによって完全にオンラインでも採用ができるようになり、地方に住む優秀な人たちとたくさん出会えるようになったというメリットがあります。

データだけではなく、データを踏まえてビジネス・プロセスが変わっていくことで成果が上がるというのは、本当に可能性があると感じています。個人的にはこういった取り組みをどんどんオープンにしていきたいと思っています。「DHRP(デジタルHRプロジェクト)」と検索いただくと、取り組みを全て公開していますので、ぜひご覧いただければと思います。

竹迫氏
最後、シバタさんから、DataRobotでのHRテクノロジー活用など何かアピールしたいことがありましたら。

シバタ氏
DataRobotは機械学習を自動化するツールを提供していますが、よく誤解があることとしては、ツールを買ったら全部終わりと感じられているお客様も結構多くいらっしゃいます。我々の売り方が悪いのかもしれないですが。

とは言え、データサイエンティストが非常に少ない中で、どうしたらデータサイエンティストではない人でもAIツールを使い、例えばHRや創薬や何でもいいですが、自分の眼の前にある問題解決に使えるか?ということが、今いろいろな企業さんの関心事だと思います。

それを実施していくためには、やはり人、でも人がいなかったらツール。ツールがあったとしても、それを使っていくにはどういうテーマが必要になってくるのか? こうしたAI周りの人材に必要とされる能力は何なのかが、この1年私の中でだんだん明らかになってきました。

その意味で言えば、製品だけではなく、どうしたらお客様がAIを使って成功できるか?に対して、方法論が出来上がってきたと思っています。最近、「どういう組織を作ったらいいですか?」とか「データサイエンティストではないけど、どういった人をプロジェクトに入れるべきですか? そうした人にどのような教育をしていくべきですか?」とか、リアルなところにディスカッションの軸足が移ってきたと感じていて、そこでも我々は引き続きお客様を支援していくつもりです。

機械学習において良い学習モデルは何か

竹迫氏
ありがとうございます。今出しているスライドは、機械学習において良い学習モデルは何かという図です。今まで日本企業は、自分たちが今やっている業務に合わせてITシステムを入れる、自分の会社に合うテーラーメイドなものを特注で作ってもらってきましたが、それって汎用性がなかったりしますよね。

実は今は、パッケージソフトなど既にある定形の良いものを当て込むと、精度はそこそこでも、そこを自分たちがパッケージ側に合わせていくと、結構汎用的に低コストで、まさにROIの高い投資ができることが起きています。

日本企業の場合、テーラーメイドを人間の力で頑張ってきた歴史があり、だから素直で言うことを聞く人が重宝されてきましたが、労働人口が減ってくると、そうした対応ができなくなってくるため、最後はシステムでどれだけ対応できるかが必要になってくると思います。

AIというのは結構誤解がありまして、AIの本質は人間の無意識で行っていることがコンピュータで実現できたこと。音声認識や画像処理、あとは二足歩行のように人間が考えずに無意識でやっていることが、最近のAI技術の発展により、できてきた。

普通の定形業務や人間が意識してやるもの、例えばディシジョンツリーやワークフローを元に処理することは定形業務として言語化できるので、普通にIT化すればいいだけの話です。特にRPA(ロボットプロセスオートメーション)は、普通のIT業務を自動化するだけなので、意識できている業務を粛々とやる部分です。

ですので、AIやHRテクノロジーのようなツールを入れたらそのまま解決するものではなく、ゴールの目的意識を持ち、実際に私たちが阿吽の呼吸でやってきた無意識のことを言語化し、それを会社のプログラムとして展開していくことが大事なのかなと改めて感じました。

時間になりましたので、以上でパネルディスカッションを終わりにしたいと思います。ご清聴ありがとうございました。

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